シルバーウィークに出会った蕎麦職人。【オシム】

今回のシルバーウィークに、妙高高原に行ってきました。

そういえば、今年の年明けにもスノボで行ったな…
両方連れられて行ったので、たまたまですが
たぶん来年の冬にも行く予定の妙高高原
なにかと縁深い妙高高原


さて、その帰り道、長野県上田市にある
「草笛」という名のお蕎麦屋さんに行きました。



一緒に行ったひとが何度か来たことがあり、
いつもすごく混み合っている人気店だそうで。


確かに店先も店内も広いにも拘らず
到着したお昼過ぎの2時ごろでも
待ちのお客さんがお店の外にもあふれるほどの盛況っプリ。


外で待つか…と思ったら、玄関先にガラス張りの個室があり
そのなかで蕎麦職人が蕎麦を切る姿を発見。


横幅2メートルくらいの蕎麦が幾重かに折りたたまれ
それがこつこつと切られていく。
そしてすべて切り終わると、蕎麦は木箱につめられ、
職人によって奥へと消えていきました。


昔からものづくりの様子を見るのがすきな私は
どうやってそれを伸ばしたのかが気になり、
ガラスで囲われた個室をじっくり眺めて待つことに決定。


しばらくすると職人は、大きな塊となった
蕎麦生地らしきものを抱えて戻ってきました。


するとお相撲さんのように白い粉をぶわぁさー!っと撒き、
その塊を少し手でこねながら、手のひらで伸ばすと
後ろに置かれた麺棒を手にしてさらに伸ばす。


蕎麦が広がると、また白い粉をぶわぁさー!っと撒き、
今度は先ほどよりも少し長めの棒を使って伸ばす。
また広がるとぶわぁさー!次の棒、ぶわぁさー!次の棒…


と、まだいく?っていうほどに棒を持ち替え、
最終的には2メートル近くの麺棒を使って生地を伸ばしていきました。


そうして最終的にはシーツのようにぴらぴらになった
その生地を丁寧に折りたたみ、
(私はその様子を見て、この人にお布団敷かせたら
 皺ひとつないピシーっとしたシーツの布団に
 仕上がるんだろうな、とぼんやり思った)
右側の先端から50センチ程度をまな板に載せました。


そこからは先ほどの様子と同じ。
こつこつこつこつ、
重そうな包丁で蕎麦を切って仕上げていく。


おそらく十数分に一回ぐらいのペースで仕上がるその蕎麦は
一人の職人の手から生まれては運ばれてゆきました。


職人さんてすごいな。
朝から晩まであれを淡々とやり続けるんだもんな。


そうしみじみ思っていると、ようやく席につけることに。
オーダーをし、蕎麦の仕上がりを待っていると
メニューと一緒にメニューではないファイルがテーブルに一冊。


ふとパラリとめくってみると、そこにはこの店の勇姿が詰まっていました。
…要は、雑誌への掲載などがコピーされ、ファイリングされていたのでした。


でも最近はどこの店も雑誌に一回は掲載されるんだよなぁ…
なんて思いながらみていると、びっくり。


先ほどの職人さんが蕎麦を打つ姿が大きく取り上げられていました。


いえ、このお店の紹介ページなんだから、
そりゃ載っててもそんな驚くことではないのですが、
私が驚いたのは、先ほどの職人さんが
このお店の店主であり、ほか5店舗の経営をする
社長さんであったということです。


さらに読み進めるところによれば、
産地表示を明確にすることで、「信州蕎麦」のブランド力をあげるため、
代表となって周囲に呼びかけ、会合をつくっていたり、
自身の蕎麦を実から作るために土地を買って育てたり、
とにかく信州蕎麦・地元の味を守るための
見るからにすさまじい努力をされている方のようなのです。


ガラス張りの外から見たときには
ただのイチ、職人のお父さんだと思っていたのに、
そんな情熱のある方だったとは…


私はそれに、ひどく感動しました。
情熱を持って取り組んでいる姿勢ももちろんですが
なにより、トップが現場の、一番麓の仕事をし
汗水たらして働いているという姿に。


さらにご主人は、蕎麦打ち五十年の職人であってもなお、
蕎麦の研究者であり続けるのだという情熱っプリ。
この経営者はすごいな、と、単純にそう思いました。


上には上の仕事がある。
確かにそうだと思います。
それでも、現場に入って目を向けて
一番お客さんに近い位置で居続けることを止めないご主人は
やっぱりかっこいいと思ったし、
さらに五十年続けてもまだまだ、という貪欲な姿勢は
すばらしいものだと思いました。



私には経営者の気持ちや大変さは、なったことがないのでわかりませんが
イチ、部下としては、やっぱり働く経営者の後姿を見せてくれると
「よっしゃ、自分も食いぶちくらい稼がにゃ!」
という気持ちになります。


さらにどんな状況でも向上心を持って事業に取り組んでいる姿勢には
時勢など関係なく、ついていこう!という気持ちにさせられると思います。


あ、ちなみにもちろん、うちの経営者も
そう思わせてくれる方の一人でございます(笑)


どんなやり方が正解、ということではないと思いますが
そういった経営者の姿勢や行動が
雇用される側のモチベーションアップになったり
雇用する側・される側の垣根を越えて
一緒に会社を支え、つくっていこうという関係性を
築くことにつながるのではないかなぁ…


と、おいしいお蕎麦を食べ、旅の終わりを感じながら
オシムはふと、そう思ったのでした…


オシム